はじめに(免責を兼ねて)
詐欺的な投資案件など、こちらに非がない状況で、金銭被害を受けた場合、なんとかして、金銭被害を回復させたいですよね。
約3年のうちに26個の金銭被害を被った私自身もそうでした。
私は、泣き寝入りする事なく、うち5個に返金請求を行い、約450万円の返金を受け取り、うち3個に対しては裁判(少額訴訟かつ本人訴訟)を行い、全て勝訴(和解、および支払いによる棄却も含む)しました。
このページでは、私が実際に取った対抗手段を紹介したいと思います。
※免責事項:あくまで私の体験の紹介となります。基本的には、最寄りの消費生活センターや弁護士など、専門家に相談する事をお勧めします。
1.返金請求可能かの判断を行う
判断材料は以下となります
①金銭を渡した証拠がある
②相手の所在と連絡先がわかる
③返金を主張する法的根拠がある
順を追って説明します。
①金銭を渡した証拠がある
まず、相手に金銭を渡した事実、を証明する必要があります。
銀行口座からの振込みや、クレジットカードによる支払いであれば、明細書が証拠となります(手元になくても、銀行やクレジットカード会社に連絡して発行する事ができます)。
もし、ない場合でも、契約書や領収書等の書面、メールや音声等があれば、間接証拠になります。
やっかいなのは、これらの証拠がなく、手渡しや仮想通貨で金銭のやり取りをした場合です。
仮想通貨は、改ざんが困難なブロックチェーンに記録が残っているので証拠になり得そうですが、送金先のアドレスが、誰のものであるかを証明する事が困難であるため、送金先のアドレスだけでは、証拠としては非常に弱い場合が多いです。
お金がデジタル化した事で、お金の送受信がしやすくなりましたが、それと同時に、詐欺がしやすい環境が出来た、とも言えます。
仮想通貨を誰か(知ってすぐの第三者)に送金する場合は、常に詐欺を疑った方が良いです。
②相手の所在と連絡先がわかる
相手の所在(住所)が訴訟をする場合に必要になります。
不明な場合は調べる必要があります。
法人の場合は、法人のHPや、最寄りの法務局で登記簿を取得する方法が考えられます。
個人の場合は、弁護士依頼が必要です。
次に、連絡先ですが、返金請求をする際に必要となります。
相手とやりとり出来れば何でもよいと思います(住所、電話番号、メール、LINE、DM、etc)。
③返金を主張する法的根拠がある
①,②を満たしていても、返金を主張する法的根拠がない場合、返金請求しても、民事訴訟をしても、お金を取り戻す事が難しくなります。
法的根拠は、民法、消費者契約法、特定商取引法についてネットで調べるか、専門家に相談しましょう。
私は、26個の金銭被害のうち、①,②,③を満たすものをピックアップし、満たさないものはどうしようもないので、断腸の思いで諦めました。
対抗しても、労力と時間とお金を追加で失うだけなので、高い授業料ではないですが、自身の非も悔い改め、今後、同じ過ち犯さないように心に誓いました。
つまりは、①,②を満たさないものには、そもそも金銭を投資/貸与してはいけない、という事になります。
2.時系列で整理し証拠を収集する
1の3要素を満たしたら、お金を取り戻せる望みはゼロではないので、次に、事の経緯を時系列に整理します。
証拠となりそうな書類や記録(音声、メール、LINE等のキャプチャ、日付等の入った手書きのメモなど)を集めます。
WebサイトやLINEなど、相手によって削除される可能性があるものは、このタイミングで一度、キャプチャを取るようにしましょう。
もっと言うと、金銭を個人/法人に投資/貸与する際は、最初から、最悪の場合を想定して、証拠を残しておく事をお勧めします。
私は、投資系のセミナーや打合せは、録音するようにしており、実際、これにより、何度か救われました。
3.専門家に相談する
2をベースに、専門家に相談します。
主な相談先は以下となります。
①消費生活センター
②弁護士
③警察
順を追って説明します。
①消費生活センター
まず、最初に考えられる相談先が、消費生活センターとなります。
局番なしの188で、最寄りの相談窓口に繋がります。
場所を調べて直接訪問しても良いでしょう。
②弁護士
法的な相談は、基本、弁護士相談となります。
自治体(市区町村)等の法律相談や法テラス、最寄りの弁護士事務所での相談となります。
私はなるべく追加費用を掛けたくなかったので、区の無料法律相談を利用しました。
(法テラスは無料となる収入条件を満たさなかった)
無料相談は約30分なので、2を整理して、簡潔に相談しましょう。
時間が限られるので、法的根拠として、どの法律の何条が該当しそうかを聞くと良いでしょう。
③警察
民事不介入の原則があるため、振り込め詐欺など、明らかな詐欺行為ではない限り、期待する対応は望めないので、この時点では必須でありません。
どうしようもない場合は、手遅れになる場合もありますので、一度、相談するのも良いでしょう。
4.返金請求を行う
手堅くいくなら、弁護士/司法書士/行政書士に依頼して、内容証明を出して貰う方法ですが、最初は個別に交渉してみましょう。
まずは意思表示!(主張しないと何も始まりません)
事前に、こちらの主張を整理した上で、相手に返金を請求する旨を伝えます。
こちらの主張に法的根拠があり、相手が法人等のまともな相手であれば、この時点で、返金に応じる場合がわずかながらあります。
個人の場合でも、まともな相手であれば、返金の意志くらいは示すのではないでしょうか。
まともな相手であれば・・・
大抵がまともな相手ではない
ので、交渉が決裂した場合は、裁判のやるやらとなります。
そして、裁判をやるとなると、追加費用が問題となります。
弁護士に依頼した場合、請求額や裁判結果にも寄りますが、最悪、費用倒れになる事もあります。
それがわかっているので、相手も「これ以上文句があるなら裁判しろ!」「やるならこっちも顧問弁護士入れて徹底的にやる!」「勤務先にも書面を送る!」など、強気に出てくる事もしばしばです。
最初から責任を取る気がない相手の場合、こちらからの連絡は全て無視、最悪、姿をくらます場合もあります(人としてどうかと思いますが・・・)。
裁判費用を抑えるなら・・・
本人訴訟が考えられます。
つまり、お金を出せば弁護士がやってくれる事を、全て、自分でやる裁判となります。
通常訴訟は、個人で行うには難易度が高く、弁護士の有無により、勝敗を左右する場合があります。
しかし、本人訴訟に適した訴訟方法に、少額訴訟があります。60万円以下の金銭の支払いを求める場合は、少額訴訟が可能です。
私は、少額訴訟による本人訴訟を選択しましたので、以降、その体験紹介となります。
※少額訴訟には制限もありますので、事前にきちんと確認してください
少額訴訟|裁判所
裁判に移行する際、私は、返金の意思表示を証拠として残すために、請求書を作成し、簡易書留にて、相手に送付しました。
本来は、内容証明である必要がありますが、追加費用を抑えるために、簡易書留にしました。
簡易書留では、法的には、意思表示と扱われない可能性が高いので、5で作成する訴状に「重ねて返金/解約の意志を表示する」という内容を記載しました。
5.訴状を作成する
少額訴訟では、訴状を簡易裁判所に提出します。
訴状の書式は、裁判所のHPからダウンロードできます。記載例もあります。
金銭支払(一般)請求|裁判所
ただし、PDFフォーマットしかありません。
私はパソコンで作成したかったので大変困りました。
私が作成した、訴状(Word)と証拠説明書(Excel)のフォーマットを公開しますので、必要な方は、パソコンからダウンロードしてお使い下さい。
◎少額訴訟の訴状(Wordフォーマット)
◎証拠説明書(Excelフォーマット)
※ご使用の際は、お問合せから一言いただけると嬉しく思います
音声証拠の提出は・・・
音声証拠の提出は一手間かかります。
①記録媒体(私はダイソーで買ったCD-Rにmp3で記録しました)と、②反訳書(音声を文字起こした書面)を、提出する必要があります。
音声だけでは、証拠として扱って貰えない場合があるので、反訳書は必須だと思います。
音声が長ければ長い程、反訳書の作成は大変な作業となります。専門家やクラウドワークスに外注する事も可能ですが、追加費用となります。
私は自分で行いましたが、非常に辛かったです・・・。
尚、訴状の作成は、本人か訴訟代理人か専門家(弁護士、司法書士)に限られます。
6.裁判所に訴状を提出する
5で作成した訴状等を簡易裁判所に提出します。
提出するものは以下となります。
①訴状
②登記簿謄本(相手が法人の場合)
③証拠説明書
④証拠書類
⑤記録媒体(音声等がある場合)
登記簿謄本以外は、裁判所分と相手分で、2部必要となります(相手方が複数の場合は、その分、部数がプラスとなります)。
東京簡易裁判所では、事前に訴状等の確認や相談が出来る窓口が1階にあるので、まずそこに行きます(法律相談は出来ません)。
押印や訂正印が必要になる場合があるので、印鑑を持参すると良いでしょう。
また、収入印紙(裁判所への手数料)と郵便切手(書類送達の郵便料)が、必要となります。
金額と枚数は、窓口で教えて貰えるので、地下1階のコンビニエンスストアで購入しましょう。
訴状に問題がなく、収入印紙と郵便切手を購入したら、6階の書記官室に提出しに行きます。
訴状提出後、後日、裁判日時(期日)の調整の電話がありますので、都合のよい日時を告げましょう。
7.準備書面で反論する
訴状送達後、まともな相手であれば、答弁書が送られてきます。
これは、こちらの訴状に対する、相手方の認否や主張が記載された書面となります。
答弁書に事実と異なる記載があれば、準備書面(口頭弁論の主張の準備書面という意味ですが、相手方の主張に対する、こちらの認否や主張を記載した書面となります)を提出する必要があります。
もし、提出しなければ、(期日に確認されるとは思いますが)相手方の主張を認めた事とみなされます。
こちらも、私が作成した準備書面(Word)のフォーマットを公開しますので、必要な方は、パソコンからダウンロードしてお使い下さい。
◎準備書面(Wordフォーマット)
※ご使用の際は、お問合せから一言いただけると嬉しく思います
8.期日に出廷する
期日呼出状が届きますので、記載の日時・場所に出廷します。
東京簡易裁判所の場合、4階になると思います。
時間厳守ですので、余裕をもって向かいましょう。
期日に出廷しない場合、出廷した側に有利な判決になる場合がありますので、必ず出廷しましょう。
時間になると、テーブルへの着座を促され、裁判官の質疑応答に答える形で、裁判が進みます。
相手方も出廷しており和解調整となる場合は、調停委員が当事者の間に入って、別室にて、和解内容の調整が行われます。
本人訴訟が、考慮されている印象を受けました。
9.訴訟費用を確定する
裁判後、調書(判決書)が届きます。
和解や勝訴した場合は、相手の支払いを待つ形となります。
支払いがなく、強制執行する場合は、調書(判決書)が必要になりますので、大切に保管してください。
勝訴した場合は、訴訟費用も相手に請求可能です。
別途、訴訟費用額確定処分の手続きが必要になりますので、詳しくは書記官室で、確認して下さい。
10.強制執行を行う
支払いがない場合は、強制執行手続きとなります。
強制執行するためには、銀行口座や勤務先など、相手の財産の所在を把握しておく必要があります。
銀行口座を例に挙げると、以下を特定しておく必要があります(口座番号は不要)。
・銀行名
・支店名(ネットバンクの場合は不要)
相手が法人の場合はその法人の登記簿謄本、強制執行先(第三債務者)が銀行の場合は銀行の登記簿謄本が、それぞれ必要となります。
最寄りの法務局で取得しましょう。
少額訴訟の強制執行手続きは、簡易裁判所の書記官室となります。
詳しくは、書記官室で確認しましょう。
強制執行の空振り
ちなみに、強制執行した銀行口座に残高がない場合は、強制執行が空振りに終わります。
その際は、他の財産の所在を調査するか、公的手続きとしては、財産開示手続きとなります。
財産開示手続きに、相手が対応しなかった場合や虚偽の供述をした場合、刑事罰が科せられ、刑事事件扱いとなる可能性もあるので、対抗手段としてはアリだと思われます。
ここまでされて、対応しない相手が居たら、それはそれで人間性を疑いますね・・・
管理人の所感
実際に裁判を通じて、私が強く感じたのは「どこまでいっても被害者の方が弱い立場にある」ということです。
被害に会って嫌な思いをし、何もしなければ泣き寝入りとなり、裁判をするにしても時間と労力とお金を使い、裁判に勝訴しても嫌な思いをする場合があります(費用倒れや空振り)。
私たちが常日頃からできる事は、そんな弱い立場である被害者にならないよう対策する事と、そのような酷い思いをさせる加害者に自らがならない事、だと思います。
正攻法はここまで・・・
私的制裁は、法律(傷害罪、暴行罪、名誉棄損罪、脅迫罪など)で禁止されておりますので、正攻法での対抗手段はここまでかと思います。
これ以上は、行政機関/警察に動いて貰うしかありません。
相手に違法行為があれば、行政機関への告発、および警察への被害届/告訴、が考えられます。
11.行政機関へ告発する
(Coming Soon・・・)
ある事件にて、国税庁、金融庁、消費者庁への告発を検討しております。
行動に移しましたら、こちらにまとめます。
12.警察へ届ける
(Coming Soon・・・)
ある事件にて、警察への被害届/告訴状の提出を検討しております。
行動に移しましたら、こちらにまとめます。
PS.
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